生理人類学とは
生理人類学は,ヒトの生物科学的特性を時間軸,空間軸を俯瞰して探求する自然人類学の中にあって,生理学的な観点からヒトの本質を研究する学問です。自然人類学の中には古くから生理学的研究の流れがありますが,生理人類学はその点を明確にしたものです。生理機能の測定は骨や化石からでは不可能であり,自ずと「生きているヒト」が研究の対象となります。こうした生理人類学の特性から,現代文明に生きるヒトの人類学ということもできます。
生理人類学の研究対象はヒトの生理的な機能特性に関することはすべてふくまれるといっても過言ではありません。ここでは生理的なメカニズムを追求するだけではなく、何故そのようなメカニズムが存在するのか、進化、適応という観点から探求することが求められます。わが国では高次神経や骨格筋の機能研究に始まり,個体レベル,集団レベルにおける全身的協関,生理的多型性,環境適応能,機能的潜在性,テクノ・アダブタビリティなどの研究へと発展してきました。
今日,われわれが生活している環境は,かつてわれわれの祖先が生活していた環境とは著しく異なっています。科学技術の発達は一面では快適な生活環境をもたらしましたが,他方,さまざまな新たな問題を生じさせています。生理人類学は,人類が直面しているこのような問題について解答を与えることができる科学として,大きな期待と注目を集めています。
(文責:勝浦哲夫)
沿革
本学会は、1978年に「生理人類学懇話会」として設立されました。1983年に懇話会は発展的に「生理人類学研究会」と改称、1987年より「生理人類学会」、さらに1993年より「日本生理人類学会」として新たな歩みを始めています.人類学、生理学、人間工学、心理学、医学、看護学、健康科学、農学、家政学、環境科学、生活科学、体育学、機械工学、電子工学、建築学、木材科学、芸術学、デザイン科学などの幅広い分野から産官学の研究者が参加し、活発な学会活動を行っています。
主な活動
英文誌「Journal of Physiological Anthropology」
本誌はBMC(BioMed Central)のオープンアクセスジャーナルとして、原著論文、総説、短報、技術報告等を掲載する英文学術誌です。Web of ScienceR(トムソン・ロイター), BIOSIS PreviewsR*、Biological AbstractsR*、 MEDLINE、PubMed、Scopus、J-STAGE、JDream-II等に登録されています。
和文誌「日本生理人類学会誌 – Japanese Journal of Physiological Anthropology」
本誌は年4回刊行され,総説,原著論文,研究報告,短報,技術報告等を掲載する和文学術誌です。
学術大会(年に1回、6月ごろ開催),セミナー,公開シンポジウム
本学会では会員に対し、次のような賞を設けその栄誉を称えています。尚、これまで優秀な論文に対しては、論文賞が授与されていましたが、2003年度授賞分より、論文大賞および優秀論文賞として賞が授与されることになりました。また2014年度授賞分より,功績賞および優秀研究賞が新たに授与されることになりました。
日本生理人類学会功績賞
生理人類学の研究発展に特に顕著な貢献をした個人を対象とする。。
日本生理人類学会賞
生理人類学の発展に特に貢献した個人を対象とする。
日本生理人類学会論文大賞
本学会誌(英文誌、和文誌)に、特に優秀な論文を複数発表した個人を対象とする。
日本生理人類学会優秀研究賞
生理人類学分野の発展に貢献した、学術的に影響力のある優れた生理人類学的な
研究を行っている個人を対象とする。
日本生理人類学会優秀論文賞
本学会誌(英文誌、和文誌)に掲載された論文の中で、特に優秀とされる論文を対象とする。
日本生理人類学会論文奨励賞
本学会誌(英文誌、和文誌)に掲載された論文の中で、特に優秀とされる論文を発表した若手研究者を対象とする。
会勢状況(2020年7月8日現在)
正会員576名、学生会員11名、海外会員12名、賛助会員6団体、
名誉会員17名、会友2名
名誉会員(五十音順)
- 飯塚 幸子
- 石井 勝
- 市丸 雄平
- 大野 静枝
- 片岡 洵子
- 古賀 俊策
- 曾根 良昭
- 田中 正敏
- 田村 照子
- 栃原 裕
- 中根 芳一
- 橋本 修左
- 早弓 惇
- 藤野 武彦
- 宮野 道雄
- 矢永 尚士
- 吉田 敬一
会友